相続の基礎知識31
31 遺言にはどのような方式があるのでしょうか。また、方式ごとの長所と短所について述べてみます。
通常の方式による遺言には、①自筆証書遺言(民法968条)、②公正証書遺言(民法969条、969条の2)、③秘密証書遺言(民法970条)があります。特別の方式による場合を除いて、遺言はこれらの方式によって作成されなければなりません(民法960条、民法967条)。
① 自筆証書遺言
遺言者が、遺言の全文、日付、氏名を自書し、押印することで作成できます。
長所
・ 最も簡単に作成できる遺言で、費用もかかりません。
・ 一人で作成できるので遺言の存在自体を秘密にできます。
短所
・ 紛失や偽造、書きかえられる危険があります。
・ 遺言として法律に定める要件を満たしていなければ効力が認められないため、作成の際には注意が必要です。
・ 自筆証書遺言については、「検認」という手続きによって家庭裁判所に遺言の存在とその内容を確認してもらわなければなりません(民法1004条1項)。この手続きを経ずに遺言の内容を執行したり、開封すると、5万円以下の過料に処されます(民法1005条)。
② 公正証書遺言
遺言を公正証書として作成する方式です。公正証書とは、その内容を公に証明する効力をもった文書で、その作成権限をもつ公証人(法務大臣が任命し、法務局に所属する)に作成してもらいます。具体的には、証人2人以上の立会いのもとで、公証人に遺言の内容を伝え、公証人がそれを筆記する方式で作成されます。
長所
・ 公証人の前で作成されるので、偽造等の危険はありません。
・ 原本は公証役場に保存されますから、紛失の危険もありません。
・ 公正証書による遺言については、検認の必要がありません(民法1004条2項)。
短所
・ 証人・公証人に遺言の内容が知られてしまうこととなります。
・ 手続きが煩雑であり、公正証書を作成するため費用もかかってしまいます。
③ 秘密証書遺言
遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に、あらかじめ作成・封印した遺言書を提出して行う方式の遺言です。
長所
・ 遺言の存在は明らかになりますが、遺言の内容は秘密にすることができます。
短所
・ 封をしてある遺言が要件を満たしていない場合は無効となってしまいますから、これも作成の際には注意が必要です。
・ 公正証書遺言と同様に手続きが必要となり、費用もかかります。
・ 自筆証書遺言と同様に検認を受ける必要があり、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ開封することができず(民法1004条3項)、家庭裁判所外で開封してしまうと5万円以下の過料に処されます(民法1005条)。