相続の基礎知識29
前回に引き続き、どのような場合に遺言を作った方が良いかという点についてお話していきます。
前回、「法定相続人がいない場合」や「法定相続人がいても他の者に遺産を渡したいとき」には遺言を作成した方が良いとのお話をしました。
では、法定相続人だけに相続させる場合には、遺言を作る意味はないのでしょうか。
遺言がない場合、民法で定められた相続人(法定相続人)に、民法で定められた配分(法定相続分)で遺産が配分されることになります(もっとも、相続人全員の協議によって、法定相続分と異なる遺産分割をすることはできます。→「相続の基礎知識20」参照)。
民法で、社会通念上妥当と考えられる配分(法定相続分)が定められているわけですが、被相続人としては、相続人の心身の状態・職業・収入など個々の事情に照らして、法定相続分とは異なる割合で相続させたいと考える場合もあります。
このような場合、被相続人が相続させる割合を遺言によって決めておくことができます。つまり、遺言によって、法定相続分とは異なる割合で法定相続人に財産を相続させることができるのです。
ただし、法定相続人のうち一定の者については、遺言によっても奪うことができない遺留分という権利があります(民法1028条以下)。遺留分を下回る財産しか相続させない旨の遺言を作成したとしても、遺留分権者がこれを主張する場合には、遺言の内容どおりの配分に相続させることができませんので注意が必要です(遺言によって遺留分を奪うことはできません。)。