相続基礎知識26
26 相続の承認の仕方として単純承認と限定承認があるとのことですが、
まず、単純承認とはどういう場合のことをいうのですか。
1 まず、被相続人が亡くなって相続が開始すると、相続人は、相続開始の
時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継することになります
(民法896条)。しかし、一切の権利義務のなかには、借金などの債務も
含まれます。受け取る財産より借金のほうが多ければ、相続するのをやめ
る(放棄)ことも選択枝の一つと相続人に与えるべきであり、民法は、相続
放棄の手続きを認めています。相続放棄の内容は、既に22や23で述べ
ていますので参照ください。 さらに、相続を承認する場合でも、民法は、
被相続人の権利義務を無限に承継する単純承認(920条)と、相続によ
って得た財産の限度でのみ被相続人の債務などを弁済するという条件で被
相続人の権利義務を承継する限定承認(922条)の2種類を用意してい
ます。
2 通常、3ヶ月の熟慮期間(3ヶ月の間に調査ができなければ、家庭裁判
所に熟慮期間を延ばしてもらうこともできます)に、どの程度の財産と負
債があるか判る場合が多いので、そのまま相続するか、相続放棄をするか
を選択し手続きを進めていく場合が圧倒的です。そして、そのまま相続す
る場合のことを、単純承認と言うのです。その場合には、財産も取得する
代わりに借金など負債も支払う義務を負うことになります。
3 単純承認で特に注意しなければならないことは、つぎのようなことがあ
れば単純承認をしたものとみなされてしまうことです(民法921条)。
ア 相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき(保存行為などは
別)
イ 相続人が熟慮期間内に限定承認または相続放棄をしなかったとき
ウ 相続人が、限定承認または相続放棄をした後に、相続財産の全部また
は一部を隠匿したり、消費したり、わざと相続財産の目録に記載しなか
ったとき
実際、どのような場合に単純承認とされてしまうのかについて、これま
で裁判で争われた例もあり、迷われたら専門家にご相談されることをお勧
めします。