相続の基礎知識18
相続が開始した場合,通常は相続開始後の法律関係を安定させるためになるべく早く遺産分割をするのが望ましいと思います。
しかしながら,一定の場合遺産分割が禁止される場合があります。
今回は,どのような場合に遺産分割が禁止されるかみてみましょう。
1 遺言による分割禁止(民法908条)
被相続人は遺言で5年を超えない範囲で遺産分割を禁止することができます。
これは,例えば,家賃収入が妻の老後の生活基盤となっている場合,夫が自分名義の貸しアパートについて分割を禁止する遺言するというような場合が考えられます。
もっとも,相続人全員の合意があれば,禁止期間中でも分割の協議・審判を求めることができるとされています。ただし,遺言執行者(民法1013条)がいる場合は相続人全員の合意があっても分割できません。
2 協議・調停による分割禁止
明文の規定はありませんが,法が分割の時・方法について共同相続人の意思によることを認めていることから認められています。
この場合も,分割禁止の期間は民法908条あるいは256条1項但し書が類推され,5年を超えることはできないとされています(協議の場合は更新は可能とされています。)。
3 審判による分割禁止
共同相続人間で協議が調わず審判を求めた場合,特別な事由があるときは,家庭裁判所は期間を定めて遺産の全部または一部について分割を禁止することができます(民法907条3項)。
このような措置は,遺産の現状や相続人の状態が即時分割するに適さない場合等このような禁止措置がとられることがあります。なお,この場合の分割禁止の期間もやはり5年以内とされています。