相続の基礎知識11
相続の基礎知識11
今回は、債務の相続についてお話しします。
債務といっても種々あり、他人からの借入金、家や土地を借りているときの賃料、商売をしているときの買掛金、銀行などへの保証などが該当します。
1 上記の債務も原則相続の対象となります。
そして、相続開始(被相続人の死亡)と同時に相続されたという扱いになります。相続人が複数のときは法定相続分に従って分割債務として相続することとなります。たとえば、亡くなった夫に1000万円の借金があり、妻と子供2名が法定相続人である場合、妻が2分の1の500万円、子供が4分の1のそれぞれ250万円の借金を相続することになります。
たとえ、法定相続人の間で遺産分割について協議がなされ妻が全部の財産を取得すると合意しても、貸し主(例えば銀行)が了解しない限り、子供は財産を貰わなくても貸し主から250万円の請求を受ければ払わなくてはならないのです。逆に貸し主から子供に1000万全額支払うように言ってきても、250万円の範囲で応ずればよいことになります。
そして、具体的な遺産分割の割合より多くの借金を支払った相続人(上の例では子供)は、あとで他の相続人(上の例では妻)に求償することで調整することになります。
この事は、被相続人(上の例では夫)が他の人と連帯債務を負っていた場合も、同じで、法定相続人が法定相続分に応じて負担すればよく、全額を連帯して負担することにはなりません。
2 例外的に相続の対象とならない債務もあります。
その典型が身元保証の債務です。身元保証とは、身元保証人が使用者に対し身元本人(被用者)の行為によって生じた損害を賠償することを約束するものです。身元保証は、責任が広い範囲に及ぶことから、身元保証人の責任が酷にならないよう身元保証ニ関スル法律により責任を軽くしていますが、相続でも一身専属的な義務(身元引受人と身元本人との間の特殊な人間関係に基づき約束した債務)と扱い、相続の対象から除外しています。
ただし、相続した時点で既に損害が発生し被相続人が責任を負うべき場合は、相続の対象となり1と同様の扱いになります。