相続の基礎知識9
今回も引き続き、相続財産(遺産)について見ていきましょう。今回は、遺族年金と葬儀費用について説明します。
1 遺族年金は相続財産に含まれるのでしょうか。
遺族年金は、法律の規定によって支払われるものですから、遺族年金の受給は、受給者に認められる固有の権利ということになります。つまり、遺族年金を相続財産と考えることはできません。
もっとも、遺族年金は、被相続人が生前に掛金を支払っていたからこそ支給されるものですから、その観点からすると、遺族年金は被相続人が支払っていた掛金の変形物のようにも考えられます。そこで、相続人の一部のみが遺族年金を受給するような場合には、相続人間の公平のために、遺族年金を受給できることを考慮して遺産分割することも考えられます。
2 葬儀費用は誰が負担すべきものでしょうか。
葬儀費用を誰が負担すべきかについて直接規定する法律はありませんので、地方の慣習や被相続人との関係により決めることになります。
一般的には、葬儀費用はまず香典で賄い、不足分を相続財産から支払い、それでも不足する分については相続人が相続分に応じて支払う例が多いです。
なお、香典は葬儀費用の一部を負担することを主目的として喪主に対して贈与されたものと考えられていますので、葬儀費用に充ててもなお余剰が出るような場合には、喪主が使途を決めることができます(とは言っても、香典の趣旨から、喪主が個人的に費消することは相応しくないでしょう。)。
例えば、今後の祭祀費用に充てたり、被相続人の意思・相続人の生活状態・香典を贈与した者の意思等を総合的に考慮して配分するのも良いでしょう。