相続基礎知識24
相続人が誰もいないとき、相続財産はどうなるのでしょうか。
民法951条は、「相続人があることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする」と規定し、相続財産法人に管理人(相続財産管理人)を置いた上で、この管理人によって、相続財産の管理・清算及び相続人の捜索を行わせることとしています(民法951条~959条)。
少し詳しく検討していくことにしましょう。
1 「相続人があることが明らかでない」とは?
相続財産法人が成立することになる「相続人があることが明らかでない」場合とは、どのような場合を指すのでしょうか。
ア 「相続人があることが明らかでない」といえる場合
・ 相続人のないことが明らかである場合
・ 相続人がいるのか否かはっきりしない場合(相続人か否かは実際の血縁関係によって決することになるため、戸籍上相続人がいなくとも相続人がいないとは言い切れない)
・ 相続人全員が相続を放棄した場合(相続放棄した者は、相続開始時から相続人でなかったことになる)
イ 「相続人があることが明らかでない」にいえない場合
・ 相続人が存在する場合(その相続人が行方不明・生死不明であっても、「相続人があることが明らかでない」とは言えない。)
・ 相続人は存在しないが、相続財産全部の包括受遺者(遺言により財産を受け取る人)が存在する場合
2 相続財産はどうなるのか?
では、「相続人があることが明らかでない」場合、どのような流れで相続財産が清算されるのでしょうか。
ア 家庭裁判所は、利害関係人(受遺者、債権者、特別縁故者等)の請求によって、相続財産管理人を選任します(民法952条1項)。相続財産管理人は、一般的に弁護士や司法書士等から選ばれます。
また、相続財産管理人が選任されたことを公告して(民法952条2項)、相続人を捜索します。
↓
↓
イ アの公告後、2か月以内に相続人が現れない場合、相続財産管理人は、相続債権者及び受遺者がいればその旨申し出るよう、2か月以上の期間を定めて官報に公告します(民法957条1項)。
また、その存在が判明している債権者及び受遺者がいれば、相続財産管理人が個別に通知します。
↓
↓
ウ 相続財産管理人は、届出があった債権者・受遺者に対し、相続財産から弁済を行います。弁済に必要な金銭が足りない場合には、相続財産管理人が相続財産を換価します(例えば、不動産を競売するなど)。
↓
↓
エ イの期間経過後にも相続人が現れない場合、家庭裁判所は、相続財産管理人もしくは検察官の請求によって、相続人があるなら名乗り出るよう6か月以上の期間を定めて公告をします(民法958条)。この期間内に相続人が現れなかった場合に初めて、相続人がいないことが確定します。
↓
↓
オ 相続人がいないことが確定してから3か月以内に、特別縁故者から相続財産の分与を求める申立があり、これが家庭裁判所に認められれば、相続財産管理人は、残っている相続財産の全部または一部を特別縁故者に分与します(民法958条の3)。
※特別縁故者については、次回、詳しく説明します。
↓
↓
カ 上記の手続きを経てもなお、相続財産が残っている場合には、残った相続財産は国の所有となります(民法959条)。
なお、上記の手続の途中で相続人のあることが判明した場合には、相続財産法人は初めから存在しなかったものとみなされ、現れた相続人は相続開始の時に遡及して相続財産の主体となります。もっとも、相続相続財産管理人がそれまでにした行為はそのまま効力を持つことになります(民法955条)。