相続の基礎知識3
今回は,養子や愛人の子の相続についてです。
1 養子は,縁組の日から養親の嫡出子,つまり法律上の婚姻関係にある夫婦から生まれた子の身分を取得するとされています(民法809条)。
そのため,養子にも養親に関しての相続権が認められ,嫡出子と全く同じ相続分が認められます。
ただ,ここでいう養子は,縁組届を役所に提出して戸籍に記載されている養子でなければならず,そのような縁組届をしていない事実上の養子は,相続上は赤の他人であるため相続権はありません。
なお,法律上の養子には,普通養子と特別養子があります。普通養子縁組の場合には,実親との間の親子関係も残りますので,実親に関する相続権も認められますが,特別養子縁組の場合には,実親との間の親子関係は終了しますので(民法817条の9),実親に関する相続権はなくなります。
2 では,愛人の子には,相続権はあるのでしょうか。
法律上の妻でない愛人との間の子は,法律上の婚姻関係にある夫婦間の子ではないので非嫡出子となります。
非嫡出子については,その父との間に生物学上の親子関係があったとしても,法律上の親子関係を発生させない限り,父に関する相続権はありません。
したがって,父親による認知(民法779条),あるいは愛人の子側からの認知の訴え(民法787条)により法律上の親子関係を発生させない限り,愛人の子には父親に関する相続権は認められないのです。
なお,非嫡出子については,認知によって法律上の親子関係が発生したとしても,相続分については嫡出子の半分とされています(民法900条第4号)。
この点については,下級審の裁判例においては,出生による差別にあたるとして憲法違反であると判断したものもありますが,法律改正はされていませんし,最高裁判所も憲法違反との判断はしておりませんので,現時点においては,相続分に関しては嫡出子と非嫡出子との間に大きな差があるのが現状です。