相続あれこれ
昔、遺言に関し苦い経験があります。
知人の紹介で、二人の相談者が訪れたことがありました。一人の相談者Aさんは、ガンのため余命数ヶ月で、これまで大変に面倒をみてくれたもう一人の相談者で友人のBさんに自分が死んだら預金を全部差し上げたいとのことでした。Aさんは、離婚しており法定相続人として子供が一人いるが、その子供とも何年も会っておらず、すでに所帯をもって生活にも困っていないとのこと。
遺言書を作ることをすすめ、遺言書の種類とその長所、短所を説明したところ、Aさんは、公正証書による遺言にしたいとのことでした。そのため、公証人役場との日程調整もあり、一週間後に再度、事務所に来ていただくことにしました。
ところが、2~3日たって、Bさんから電話があり、Aさんが亡くなったとの連絡を受けました。あんなに元気だったのにと驚いて事情を聞くと、AさんとBさんは、相談があった日にAさんが久しぶりにサウナに行きたいと言ったので一緒に出かけた。暫くサウナに入っていたらAさんの容態が急変して、救急車で病院へ搬送したが、間に合わなかったとのこと。サウナに入ったため、身体に急に負荷がかかったのではないかとのことでした。
相談した日、Aさんはとても元気でしたので、まさか急死することはないだろうと思っていました。しかし、そのとき、人間、いつどこで何が起きるか判らないと実感しました。
この事があって以降、相続の相談を受けた場合、可能であれば、念のため、簡単な自筆証書の遺言書をその場で書いて貰うことにしています。あとで付け足したいことがあったり、公正証書に作り直したいとの希望があっても、骨子だけでもまず書いて貰うことを勧めています。
上記Aさんの場合には、とりあえず以下のとおり書いて貰うことになったと思います。
私は、私の全財産をBさんに相続させる。
平成○○年○月○日 A 印
遺言書にまつわる相談や事件の受任は、これまでかなり手がけてきましたが、また、ぼちぼちと独り言をつぶやいていきたいと思います。
それと共に、最初に書かせていただいたように、このブログを見ていただく方にとって役立つ情報も掲載していきたいと企画しています。その手始めとして、相続の基礎知識をこれから定期的に載せていきたいと思っています。できるだけ、判りやすくと考えていますが、なにせ法律用語を正確性を保ちながらかみ砕いて説明することは大変やっかいなことで、判りにくいときもあると思いますが、ご容赦ください。